お三の宮日技神社

吉田新田完成後、1673(寛文13)年9月10日、吉田勘兵衛が鎮守社として社殿を立てたと言われる神社。
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「正しくは日技神社(ひえじんじゃ)」と呼ぶ。
(南吉田町町内会)

「総本社は、比叡山の山麓にある日古大社で、(中略)祭神は大山咋神(おおやまくいのかみ)。」
(南吉田町町内会)

日技神社は滋賀の日吉大社(↑の日古大社)から分霊されたもので、同社からの分霊社は全国に3800あるという。
(日吉大社)

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<滋賀の日吉大社について>

日吉大社は8世紀以前に存在し、天台宗創始者である最澄が「比叡山延暦寺を建立した際、(中略)延暦寺の守護神として崇敬したという。」
(JAPAN WEB MAGAZINE)
崇敬するだけでなく、「寺の鎮護神としてこの大山咋神を山上から降ろし　一方三輪明神を勧請し比叡山の登山口であるこの地に祀る。」
また同時に大山咋神の「妻、、鴨玉依姫神（かもたまよりひめのかみ）を」も祀っている。
(滋賀県観光情報)
「日吉神社はその後，最澄が修行した唐の」天台山国清寺の山王祠「に倣って『日吉山王』，さらに仏教風に『山王権現』とも呼ばれるようになる。」
(国宝を訪ねて)
(南吉田町町内会)

ただ呼ばれるだけでなく、「神号を山王と奉」ったとも言われている。
(南吉田町町内会)
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日技神社は同じ年、同じ境内に建てられた稲荷神社と共に、「武蔵国 久良岐郡(くらきごおり) 吉田新田の村の鎮守様として村民に崇められていた」。

「祠官(神主)の八代角井内記が嘉永年間」(1848-1854)に病没し、九代目の斎次郎が引継いだが、幼少の為、常清寺が面倒をみることになった。
常清寺は山王(日枝)・稲荷の二社と同様、吉田勘兵衛が建てたもの。
(南吉田町町内会)

しかし、「神仏判然令」(1868、明治元)に始まる明治維新後の神仏分離政策により、
(函館市史)
「『神仏混渚まかりならぬ』とのお達しがあり、1869(明治2)年、氏子総代・名主(吉田家)一同が願い出て、未成年の斎次郎を斎之進と改め、祠官として奉仕することになった。
同時にそれぞれの社号を「日枝大神」「稲荷明神」改めるようにとの指示があったが、1871(明治4)年の「神社の社格を定めた太政官布告」に基き、「『日枝神社』『稲荷神社』と 改称され、それぞれ村社と郷社に列せられ」た。

日枝神社が村社に列各されたのは1875(明治8)年のこと。

明治初期に国家神道が確立され、教部省より「巷の道端に神様を放置するのは恐れ多い」との布達により、1877(明治10)年、道端の小祠も社内に奉納される。
(南吉田町町内会)

1923(大正12)年、関東大震災により、稲荷神社は一度焼けてしまった。
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1928(昭和3)年9月には、「日枝神社は、神儀幣・吊供進社に指定されてい」る。
(南吉田町町内会)

太平洋戦争中には、日枝神社が焼け、1951(昭和26)年に建てなおしている。
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1977(昭和52)年6月25日に遷座合祀の儀稲が行われ、稲荷神社を合祀したと言われている。
(猫のあしあと)
(南吉田町町内会)

敷地内には、1673(寛文13)年9月10日、建立当時に「吉田勘兵衛自らが寄進した獅子狗１対」、1674(延宝2)年に「勘兵衛の縁者と思われる人々によって寄進された水鉢」、1934(昭和9)年「氏子が寄進した大神輿と神輿車」が残っている。
(小市民の名所・旧跡散歩　ふ～よ)
(南吉田町町内会)

今では毎年9月に例大祭を行い、大神輿巡行がある。
「奇数年に行われる本祭りでは大神輿だけでなく、大小50基にも及ぶ町内神輿連合渡御がイセザキモールなどを練り歩き、市内屈指の規模を誇」るそうだ。
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数多くある日技神社の中で、ここだけが「お三の宮」と呼ばれている。
この理由については諸説あるので、詳細を見ていきたい。



<お三の宮という呼び名の由来>
(1)「お三の宮の旧社名である『山王社』が」訛り、「『山王(さんのう)の宮』から『おさんのうのみや』『お三の宮』に」なったという説。
しかし全国の「山王社」(現 日枝神社・日枝社・日吉神社・日古社)の中で、 「おさんのみや」と呼ばれている神社は他に無いという。

(2)ここは「江戸赤坂の山王社からの勧請で」、日吉大社をはじめに数えると、東京赤坂の日枝神社、お三の宮、と三番目にあたるため。
(南吉田町町内会)
ただ、江戸赤坂の山王社は、鎌倉時代の秩父重継により祀られたもの。
江戸築城の際に太田道灌により、(現埼玉県川越市の)川越日枝神社が勧進され、この場所に移されたたものと言われている。
(じゅりの父ちゃんブログ)

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<江戸赤坂の山王社について>

鎌倉時代初期、初めて江戸貫主を名乗った秩父重継が、「日比谷入江のそばの高台、後の江戸城の本丸・二の丸の辺りに館を築」いた。
(江戸東京探訪シリーズ)
そして「その居館の内に地主神として祀った」のがはじめ。
(じゅりの父ちゃんブログ)
秩父重継の長男は「『江戸太郎重長』と名のり」、ここは「江戸」と呼ばれるようになる。
南北朝を経て秩父重継の子孫、江戸氏は滅び、江戸も一時衰退し、廃城となる。
(江戸時代の台東区)
(ダイヤ主水すくえあ)

1478(文明10)年、関東を治める管領上杉氏は、家臣太田道灌に江戸の開発を任せる。
(江戸時代の台東区)
太田道灌は江戸築城にあたり、「川越の無量寺（喜多院・中院）の鎮守である川越日枝神社を」分祀し、「城内鎮守神と尊崇」した。
(旅に行き隊！)
(じゅりの父ちゃんブログ)
(東京十社めぐり詳細ガイド)
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(3)「江戸の山王社と同じ」ように、「近江の日吉山王21社のうち、大宮・二宮・三宮の分霊を祀」り、「三社の分霊を祭っていること」を示すため。
(神奈川県警察南警察署)
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ただ、各社の祭神は
大宮　；大己貴神(おほあなむちのかみ)
二宮　；大山咋神
三宮　；鴨玉依姫神荒魂(かもたまよりひめのかみ)
であり、三宮は山王二十一社上七社（山王七社）中七社目に位置づけられている。
二宮、三宮共に、間に"ノ"の字は無い。
(南吉田町町内会)
(比叡山延暦寺日吉山王権現)

(4)安産祈願をしたからという説。
「明治初期の古地図には、お三の宮の位置に、『お産の宮』と当て字をしたものもある」らしい。
1590(天正18)年、徳川家康が入城した際、城内の山王社を「徳川歴代の産土神(うぶすながみ)」として敬い、城内「紅葉山」に祀り、「徳川幕府誕生の神」と呼んだ。
それにあやかり、「現在『安産のお札』も提供して」いる。
お三の宮も江戸の山王社に倣ったという話。
(南吉田町町内会)
(えきねっと)

"お産の宮"という意味を含む呼び名に関しては、この地域自体の呼称として大正時代にも用いられていたらしい。
1923(大正12)年、関東大震災後、10月17日に横浜憲兵隊の創設と憲兵施設の設置が発表された。
横浜憲兵隊に属する横浜憲分隊の持つ施設の一つが、「御産宮分遣所」と呼ばれている。
その所在地は「横浜市蒔田町898 番地」であり、同横浜憲兵隊本部とそれに属する他の分隊、即ち神奈川・根岸憲兵分隊の管轄を除くすべての地域を管轄した。
(横浜憲兵隊の創設)

ただこれ自体は直接的な根拠としては弱く、現在調査中。

安産祈願の風習は残っていないとされる。
(南吉田町町内会)

しかし、「お産ノ宮」と呼ぶ人もいることは事実らしい。
(るーたんのちち 初詣＠2010年お正月②・日枝神社。)
(るーたんのちち ちちのきゅうじつ＠110706。)

(5)吉田新田二度目の開発前後に、成功を祈願して、或いは新田の鎮護のために『大乗経』の三つの経典を埋めたため。
干拓は、何度試みても中々上手くいかず、一度は洪水により潮除堤が崩壊し、中断を余儀なくされていた。
大正期の開発の際に、この経典が発見され、吉田家で保存していたと言われるが、関東大震災により焼失し、現物は残っていない。
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(はまれぽ.com)
(南吉田町町内会)

(6)吉田新田開発の際に犠牲となった人柱「おさん」を祀ったため。
(吉田新田)

二度目の開発の際、吉田勘兵衛に恩を感じたおさんは、防災・開発成功を祈り、人柱になったという説。
古文書には記録が無いらしい。
「江戸時代の地誌として有名な、『新編武蔵風土記稿』(1827,文政10年)の、吉田新田の項にも」言及されていないという。
(南吉田町町内会)
また、現職13代目宮司の角井瑞氏は、「根拠となるものは残っていない」と述べている。
(タウンニュース)
(はまれぽ.com)



お三の宮という呼び名の由来の、最後に紹介した説も幾通りかあるので、紹介したい。


埋納大乗経説
おさんの人柱(1)下女編
おさんの人柱(2)巡礼夫婦
芝居の中のおさん
文学の中のおさん