芝居の中のおさん

芝居では、吉田勘兵衛との出会いの場所が変わったりするが、概ね同じ内容である。

出会いの場所としては、身延山久遠寺だけでなく、信濃の善光寺もあるそうだ。

1967(昭和42)刊行の『神奈川の伝説』(読売新聞社横浜支局編)によると、勘兵衛11代目の吉田一太郎も芝居を見にいったそうだ。
吉田家の名誉を損なうものなのかと心配だったが、そんなことはなかったという。

斯波南史(しば・なんそう)は1915(大正4)年7～12月、神奈川新聞の前身『横浜貿易新報』に、おさんをモデルにした『烈女お三』を書いている。
「これを賑町の喜楽座(現在の伊勢佐木町三丁目日活会館の所)の座付作者桂田阿弥笠が、連鎖劇七場に脚色」し、同年9月「市川荒二郎・秋元菊弥一座が同所で上演」した。
9/11の初日以来、大入りだったという。

この芝居の中でおさんは「常州笠間藩(現在の茨城県笠間市)の槍術指南番佐藤右近の養女」であり、わけあって吉田勘兵衛の女中として働く事になっている。

1659(万治2)年、吉田新田二度目の工事の際、その6月に、風雨で洪水の危険が迫っていた。
その時日枝神社の宮司が「卯の年卯の月生まれのおなごを人柱に立てれば、この洪水を防げる」と云った。
それを聞いたおさんはすぐに名乗り出、祭壇を急ごしらえし、巫女の姿になり、大岡川に身を投じたという。
(南吉田町町内会)